リーディングには予言や過去の文明、人類の起源や魂などに関するもの(リサーチリーディング)もあります。フィジカルリーディング(医療リーディング)の正確さから、リサーチリーディングによって人類や世界の長年の謎が解き明かされてしまうのではないかと、期待してしまうのですが、私の印象では非常に問題のある内容となっています。普通には信じられない事や、明らかに事実と異なる事が書かれています。
例えば、一万年以上前の超古代文明のアトランティスの人々について述べた次のような記述では、3メートルを超える人類が両性具備であったとしています。また、500、600、700年の寿命があったということです。
These took on many sizes as to stature, from that as may be called the midget to the giants – for there were giants in the earth in those days, men as tall as (what would be termed today) ten to twelve feet in stature, and in proportion – well proportioned throughout. the ones that became the most useful were those as would be classified (or called in the present) as the ideal stature, that was of both male and female …364-11
身長については、小人から巨人までのばらつきがあり、その時代の巨人では、身長10乃至12フィートの整った体型を持っており、両性具備の理想的な背丈であった…
the life existence of the entity, as compared to the present, would be years instead of weeks; or, in that experience, to live five to six to seven hundred years was no more than to live to the age of fifty, sixty or seventy years in the present. …1968-2
生活において、現在と比較して週単位は年単位となり、経験において、その500、600、700年は、現在の50、60、70歳生きたことに相当していた。
また、以下の記述では、アレキサンドリア図書館のことを述べているようですが、史実と年代に一万年ほどの開きがあります。ちなみに、エジプトの大ピラミッドも紀元前10490年から10390年の間に建設されたと述べています(5748-6)。
And, as will be seen from those that may yet be found about Alexandria, the entity may be said to have been the first to begin the establishement of the library of knowledge in Alexandria; ten thousand three hundred before the Prince of Peace entered Egypt for His first initiation there. …315-4
そして、アレキサンドリアに関して発見され得るものから、この実体は紀元前10300年前にアレキサンドリアでの知識の図書館の設立を始める最初の人であったとされるであろう。
予言については、他の多くの予言者と同様に曖昧で事実に合っているかどうか分からないのが大部分です。一方、以下のような、はっきり事実と異なる予言もあります。
Portions of the now east coast of New York, or New York City itself, will in the main disappear. This will be another generation, though, here; while the southern portions of Carolina, Georgia – these will disappear. This will be much sooner. …1152-11
ニューヨークの東海岸またはニューヨークそのものは、概ね消滅するであろう。これは次の世代のことである。カロライナやジョージアの南部分は、もっと早く消滅するであろう。
ケイシーといえばアトランティスですが、驚くことにムー(Mu)やレムリア(Lemuria)といった地名も出てきます。例えば、リーディングのCDをLemuriaで検索してみると、大量のヒットがあります。リーディングでは、ムーやレムリアは実在の大陸のようです。後はオズ(Oz)といった地名も出てきますが、これはドロシーが飛ばされたところでしょうか。
フィジカルリーディングにおいて、ケイシーは時に冷徹とも思えるほど事実をそのまま述べているのに対して、上記のようなリサーチリーディングでは、首をかしげるような内容なのは一体どのような理由によるのでしょうか。
それについて私は以下に述べるような推論をしてみました。まず、ケイシーのリーディングは一種の催眠術を用いて行われています。すなわち、最初にケイシー自らが催眠状態となります。そして、誘導者が催眠状態のケイシーに暗示をかけます。例えば、誘導者が「声のでなくなった原因を述べなさい」と暗示を与えると、ケイシーは機械的にその指示に従って情報を述べます。
最初にリサーチリーディングを行ったのは、ラマースという人物です。彼は、ケイシーの透視能力は医学に限定されないはずだと考えました。適切な暗示が与えられるなら、科学であろうと、哲学宗教に関してであろうと、また考古学や未来予測、オカルトなどについても、普遍的な視点から解答を与えられるに違いないと考えたのです。かねがね、彼はそういった形而上学的な問題を研究していました。
そこでそういった質問に答えるように暗示を与えてみると、期待通り、ラマースが前々から疑問であった問題に回答を与えてくれました。その回答がデタラメでないことは、常々その問題を考えていた博識のラマースには明らかでした。
フィジカルリーディングでは、病気の内容と治療法を述べていました。これは、現に存在している人物に関する情報が求められています。その点で、事実関係は明らかです。事実がそのまま述べられます。
しかし、占星術に関する情報を求められたらどうでしょうか。そもそも占星術に関する事実とは何なのでしょうか。そもそも占星術に関する客観的な事実が存在しなかったら、そのような場合、ケイシーは何と答えるでしょうか。例えば、占星術が主観的な思想の積み重ねを基礎としたものであったら、占星術に関して存在するそういった既存の情報に基づいて回答する可能性が高いと思います。そういった情報には迷信や個人的な感想や思い込みによる想定のようなものも含まれます。
予言についても、言うまでもなく未来の事実というものはありません。もし未来の予言を求められたら、ケイシーは何と答えるでしょうか。未来に関する人々の潜在意識や既存の書籍や予言などの利用できる情報に基づいて回答するしかありません。
考古学に関しても同様です。現在、全く痕跡のない過去の事柄に関しては事実というものは意味をなさないと思います。なので、ケイシーは、そのトピックに関する人々の潜在意識や既存の書籍などの利用できる情報に基づいて回答するかもしれません。その結果、回答のシナリオに、ムー大陸やレムリア大陸も加わりました。
形而上学的な問題の幾つかや、その他の抽象的な問題のあるものは、客観的な事実を求める質問としては適していないと思います。例えば、人は死んだらどうなるか、といった質問に対して仏陀は答えませんでした。暗示を与えられたケイシーは、全てに回答します。
質問に客観性が無い以上、その回答に客観性が無いのは当然とも言えます。それでも、ケイシーはデタラメや嘘を並べていたわけではないと思います。情報に科学的な証拠がない場合であっても、文化的な背景や意味がある場合には、それに従ってケイシーは回答するのであろうと思います。